シエナ通信 (2002年10月)


皆さん、お元気ですか?

秋晴れの青い空の元、引き締まった空気がなんとも気持ちの良い季節となりました。

バール(喫茶店)のカウンターでも、郵便局の窓口でも、人が集まる至る処に会話があるのがイタリアですが、つい最近まで聞かれた夏のヴァカンスの話題は、まるで季節の終わった洋服が収納されるかのように奥の方にしまい込まれ、代わって、旬を迎える秋の食材の話題が引き出されます。この点は、日本も同じですね。

 

内陸にあるシエナは山の幸が豊富で、
この季節の旬の素材としてはポルチーニ茸や
トリュフ、イノシシの狩猟肉などが挙げられます。

今は、外国からの輸入品や冷凍加工食品、
コントロールされた環境の下で作られたものが
1年中流通し、季節外れのものがあっても
珍しくない時代ですね。

そんな中で、あえてこの秋のテーマは、

《旬の土地の風味をインプット》。


深く豊かな香りを持つこれらの素材を
あくまでもシンプルに調理し、
トスカーナの素材に深く拘ってみようと思います。



以前、エラルド爺さんが「昔のスイカは今のに比べると
こ〜んなに小さくて、濃い縞模様が印象的でね、
割ってみると中は真っ赤なんだよ。
すっごく深〜い味がしたんだよ」と、
昔のスイカの味を懐かしそうに語っていました。

そういえば子供の頃、夏を過ごした田舎で
お婆ちゃんと採ったミョウガのお味噌汁や
お爺ちゃんがもいだデコボコした粒のトウモロコシが
大好きだったのを思い出します。

《旬の味覚、土地の風味。トスカーナをしっかり舌に植えつけよう!》
というテーマを口実に、今年もまた食欲の秋がスタートします。

 



シエナの街中では中世の建物が今日の生活環境に使われているため、小さな商店が目立ちます。

肉屋、八百屋、パン屋、魚屋、乾物屋・・・これらのお店を転々とハシゴしながら買い物をするため、「あら、奥さん、さっきパンを買ってましたでしょ。またお会いしましたわね・・・オホホホホ」

などの挨拶がしょっちゅう飛び交います。

また、生産者〜中間業者〜お店へと、オシャベリ好きなイタリア人によって品物が届けられる流通の過程にも賑やかな生きた情報が飛び交います。

「ポルチーニ茸は土が付いているようなのがいいのかしら?小さめの方がいいのかしら?今年の出来はどうなのかしら・・・?」

いろいろな八百屋を回って、それぞれから話しを聞いてみるのも面白いですね。

店先に会話がある。

子供の頃に地元の商店街で見られた光景でした。

今度の日本帰国の際には、あえて会話が交わせるような商店で買い物をしてみようかと思います。

さて、今回もシエナ通信を通じて、トスカーナのエノテカで立ち話をしているような、そんな気分に浸っていただければ幸いです。

 

Chiacchiere 〜おしゃべり〜

 

店内には絶えず会話があります。

スタッフとお客様、スタッフ同士、またはお店に出入りする業者の方と・・・

そんなおしゃべりの‘ほ〜んの一部’をここにご紹介しましょう。

 

カルミニャーノの『TENUTA DI CAPEZZANA

 

気にはなっていましたが、「いつか機会があったら飲んでみようかな・・・」とチャンスを見送り続けていたワインがあります。

国家が定めるワインの法的な格付けDOCG(統制保証原産地呼称)に認定されているトスカーナの代表ワインでありながら、今一つスポットの当らないワイン。

「キャンティクラッシコで美味しいのありますか?」「どのブルネロがお勧め?」「サッシカイアはHow much?」という問い合わせが飛びかう店内で、じっと誰かが指定してくれるのを待つかのように静かな佇まいでひっそりとラックに並んでいるワイン。カルミニャーノ

 

先日、ヴァカンスを利用してシエナの語学学校に通う某大学の教授が来店されました。


Capezzanaっていうワイン、ありますか?
昨日行ったレストランで勧められたワインで、
すっごく美味しかったんですよ」

Capezzana・カペッツァーナ??? 
ん〜、絶対聞いたことがある名前。
しかし、パッと浮かびません。

「ねえステファノ、Capezzanaって、どこにあるっけ?」

同僚にヘルプを求めると、
彼はさっとカルミニャーノの棚の前に行き
「ハイ、これ。99年ビンテージ。
これは、ガンベロ・ロッソでトレビッキエーリをとったんだよ。
この値段でこの質、なかなかいいワインだよね。いい選択だよ」
と言って、白いラベルのカペッツァーナを手渡しました。

その説明も加わって、先生は迷うことなく数本を日本へ発送されました。

「そっか〜、Capezzanaってこれよね!
カルミニャーノワインの造り手の一つよね。
いつも目に映ってたけど、
一度もお客さまに勧めたことがなかったから、記憶が今一だったわ!」

 

この日を境にキャンティやブルネロ、スーパトスカーナに関して尋ねられるお客さまに、「こんなのもありますよ!」と、このワインのインフォメーションも加えてみると、数日で在庫が無くなりました。

 

ワイン好きのお客さまから生きた情報が頂けるということは、エノテカで働く大きなメリットの一つです。

先生、今回のお問い合わせ、有難うございました。同僚の方とのワイン会、大いに盛り上がってくださいね!

Salute(乾杯〜!)

 

 

CAPEZZANA  『 Villa di Capezzana’99 』

 

●色:深いルビー色。

●香:繊細な甘みとフルーツ香、そしてほんのりスパイシーを放つ

  アロマがエレガントに漂います。

●味:柔らかさと深みの触感があり、甘みを帯びた豊潤なタンニン

とバランスがとれた酸味のハーモニーが素晴らしいです。

赤い木の実とスパイスの香りと共に余韻が長く残ります。

 

●使用葡萄

・サンジョヴェーゼ 80% 

・カベルネ・ソーヴィニョン 20% 

350ml用のトンノで14ヶ月熟成後、8ヶ月ボトル熟成。

 

 

 

 

ブルネロ協会レポート

 

今回はブルネロの里モンタルチーノの町より、ブルネロ協会のディレクター、

『カンパテッリ・ステファノ』氏に伺ったお話を紹介しましょう。

 

 

トスカーナが世界に誇るワイン、ブルネロ。

イタリアワインブームの到来以前から、
その洗練された果実味と重厚な風味で奏でる
質の高さは世界各国に知られ、
今も揺ぎ無い信用と実績で注目され続けるワインです。

 

今年からブルネロ97年ヴィンテージが発売となました。
97年は天候に大変恵まれた年であり、
深い香り・しっかりとしたフルーツ香・艶のある
滑らかなタンニンが感じられる、
パワフルかつバランスのとれた葡萄が出来上がりました。

モンタルチーノでは、
‘今世紀最大の当り年’と謳われ、
アメリカのワイン雑誌「ワインスペクテイター」では、
100点中99点というポイントで
このヴィンテージが紹介されています。

これらの葡萄から出来上がった97年モノのブルネロ。


ワイン通の方は勿論のこと、ワインをこれから知りたいという方にも是非、
コレクションに押えておきたいヴィンテージです。

では、カンパテッリ・ステファノ氏のお話を通じて、モンタルチーノの今を垣間見てください。

 

●よく‘小さな造り手のワイン’をお探しのお客様がいらっしゃいますが、

現在、モンタルチーノにはいくつのカンティーナ(ワインの造り手)があるのですか?

 

約220あります。

そのうち156の造り手が瓶詰めをしてラベルを貼り市場に出荷しています。残りの64の造り手は葡萄のみを他のカンティーナに提供したり、レストラン用のテーブルワインとして提供したりいてますので、商品として市場ではお目見えしません。

 ボトリング化されている156のワイナリーの内訳は、10〜12ほどが大手のカンティーナ。 バンフィ、フレスコバルディ、ナルディ、コル・ドルチャ、カパルツォ、バルビなどといったことろですね。

そして10〜30ヘクタールを所有する中規模のワイナリーは30〜35ほどあります。それ以外は10ヘクタール以下の小さなワイナリーです。

 

 

●ブルネロの輸出国についてお聞かせください

 

モンタルチーノでは毎年約500万本のブルネロが作られます。

そのうち22%はアメリカ、13%がドイツ、11%がスイスとヨーロッパ各国への輸出が続き、日本へは2.5%が渡っています。

アメリカのマーケットは大きいため毎年11月にはニューヨークに渡り、ブルネロの試飲会を行ってます。今後の計画としてはアメリカの太平洋側での開催も考えています。

 

 

●昔のブルネロのボトルにはブルネロ協会のマークが見られましたが、今は見られませんね?

 

1980年のDOCG(統制保証原産地呼称)獲得以降、ブルネロ協会の保証マークをつけなくなりました。
 
DOCG1963年に制定された国家が定めるワインの法的な格付け

 

国家機関が検査・保証したものを
更に私達が保証する意味がなくなったからです。

キャンティクラッシコ協会の黒い鶏マークは、
[キャンティワイン]と
[キャンティクラッシコワイン]の差別化を
表現する狙いで付けられてますが、
私達ブルネロにはその必要性がないんです。

 

 

 



●《新しいスタイルの造り手》・《伝統的な造り手》という表現をよく耳にしますが、

具体的にはどのような違いを差すのでしょうか?

 

単純な説明で一概に言い切ることができませんが、トスカーナに昔からある建物の中に造られた古い構造のカンティーナもあれば、近年に建てられた全く新しい施設もあります。

緻密な工程でワインを造る場合、小さめのステンレスタンク使用、温度管理、等などその投資は大きいですので技術面での違いが出てきます。

1998年に制定されたブルネロの規定では、オーク材であればいかなる大きさの樽を使っても良いことになりました。

大樽、バリック、トンノ、タイプを問いません。

全体的な傾向としては、これらの樽をミックスすることです。

最初の1年はバリックの小さな樽で熟成、その後2年は大樽でというのがメジャーです。

ブルネロのワインは、最低2年間の樽での熟成が義務付けられています。

今の規制では葡萄の収穫から5年後の1月に市場に登場しますが、発酵後1年バリックで熟成、その後3年間を大樽で熟成させ、瓶詰めで6ヶ月というケースもありますし、発酵後3年間をバリックと大樽のいずれかで熟成させた後、18ヶ月を瓶詰めして寝かせるというケースも可能です。いづれにせよ出荷まで5年の年月がかかります。

しかし、昨年から《4年後から出荷する方向へ》という話題が挙がってますが、話題のみで実際のところはそのような動きはありません。

ブルネロ協会側からこのような提案を出しているわけではなく、どこからこの話が湧いているのか、私達も不思議に思うところです。

 

樽熟成の期間が短くなると、瓶詰めした状態で出荷を待つ保存期間が長いということになりますが、造り手はスペース面で計画を立てる必要があります。35度にもなる夏のモンタルチーノでボトルが置かれる環境は、湿気や光を避け、温度管理がされて清潔な環境でなければなりません。ここにも、最新技術に頼った手法と自然環境を利用する伝統的な手法との違いがみられます。

 

 

●バリック使用のブルネロ、大樽のみで仕上げたブルネロなど、熟成スタイルの違いが風味の違いを生みますが、消費者はボトルのラベル等でこの違いをイメージすることは出来ないのでしょうか?

 

これは、造り手側に聞いてみてください。

各造り手はラベルに自由に表記していいことになっています。

よくワイナリーの伝統と歴史を語るラベルも見られますが、個人的には、[使用されている葡萄品種][熟成方法とその期間][生産本数][飲むときの適温]といった基本要素を記述すべきだと思ってます。

 

 

●モンタルチーノの気候についてお聞かせください?

 

サンジョヴェーゼは環境条件を選ぶ品種です。

日照りが続く乾燥した夏、適切な降水量、海の影響を受けた地中海性気候と大陸性気候とのいいバランスにプラスして、標高や土質などの要因に恵まれたモンタルチーノは、サンジョヴェーゼ品種が育つ条件を十分に備えた土地です。

この環境条件があって、モンタルチーノのこのサンジョヴェーゼの味が生まれます。

 

 

●ブルネロが誕生する以前、この土地はデザート用ワイン「モスカデッロ」で有名でしたが、この品種モスカートについてはどうお考えですか?

 

残念ながらモスカート種の葡萄の生産量は減ってきています。

協会としてはこれらの伝統品種を守っていきたいのですが、モスカート種の生産には特別な知識、技術が必要とされ、今のところ約10の造り手が携わり、モンタルチーノ全体で10万本が生産されるのみとなりました。

 

ヴェンデンミア・タルディーヴァ(収穫を遅くして熟しきった葡萄で造る)タイプと発泡性のフリッザンテの2タイプに分かれますが、

有名なところでは、バンフィがヴェンデンミア・タルディーヴァタイプを約20,000本生産し、ポッジョーネはフリッザンテタイプを約15,000本生産しています。

バンフィが以前10万本以上生産していたフリッザンテタイプの製造を止めましたが、

このように大手の造り手が生産をストップすることは生産量に響いてきます。

 

 

●ワインスペクテイターは最近号で各造り手のブルネロ97にコメントと点数をつけましたが、このことについてどう思われますか?

 

いいことですよ。

この記事を書いたジャーナリスト「ジェームス・サックリン」氏はもはやトスカーナをよく知る人物で、7〜8年前から絶えずトスカーナのあらゆるワインを飲み続け、中でもブルネロはよく知ってます。

何が起こったのかをよく知り、何をすべきか、どう動くべきが知る人物です。

 

私はこの雑誌について以下のような意見を持っています。

現在、世界各国で美味しいワインが作られていますね。

カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、メルロ、ピノグリージョ(ピノ・ノアール)、シャルドネなど、世界各国で比較的栽培されやすい品種で、それらのワインの味覚は似たものになることもあります。

一方、サンジョヴェーゼは気候条件や土質を選ぶため、土地が違うと全く違ったキャラクターの風味となります。

トスカーナのサンジョヴェーゼは、ここでしか生まれない味です。

ワインスペクター誌がトスカーナのサンジョヴェーゼ品種を評価することによって、トスカーナならではのサンジョヴェーゼのオリジナル性が確立されました。

消費者はこのサンジョヴェーゼの違いを美味しいととるか、好みではないととるか?違いを選べわけですが、他の葡萄と明らかに違うことを明確化したのは、この雑誌のお陰だと思ってます。

 

 

●この夏はヨーロッパ各地で大雨が続き、損害のニュースが聞かれましたが、

ブルネロ2002の状態はいかがですか?

 

97年のように《当たり年!》とはなりませんが、これから収穫が始まる2週間の天候を見守り続けたいと思います。

ブルネロにはいい状態の葡萄のみが選ばれますので、この年のブルネロは生産量が減るか、ロッソディモンタルチーノ(ブルネロと同じ葡萄で造られる若いワイン)を造るか・・・とにかく市場に出すワインの質が堕ちることはありませんので、ご安心下さい。

 

沢山の日本の方に、モンタルチーノが生み出すサンジョヴェーゼのワインの味を是非とも知っていただきたいと思ってます。

また、機会がありましたら、是非ともモンタルチーノの町にお越し下さい。

皆様のモンタルチーノワインとの出会いをお待ちしております。

2002911日)

 

                       

★ 最後に一言

 

上の階に住むお婆さんは、大家さんのお母さんということもあり、私が居ても居なくても部屋に入ってきては、庭にある植物の手入れをします。

始めのうちは、「あんた、何時に仕事に行くの?」と
私のいない時間を見計らっては
控えめに出入りしていたお婆さんも、
今はノックと共に鍵の音を立て、

「ごめんなさいよ〜、邪魔しちゃって。
わたしゃ、あんたのモノ、何も触ってはないからね。
ただ、あの植物の手入れをするのが大好きなのよ。
生きがいなのよ。邪魔して悪いね〜チャオ・チャオ〜」と
3軒まで聞こえるような声を張り上げながら
私の部屋を往復します。


確かに、バジリコも観葉植物もみな元気に育ってます。

また友達からは、「出張で留守の間、テラスにある植物の水上げ、お願いね」と鍵を渡されました。


エノテカの屋外にはいくつかの植木がありますが、
その中に混ざってバラが一つ、二つ咲き始め、
他にも、開花を待つピンクのつぼみ達が
ピーンを上に向かって元気に伸びています。

これは昨年市場で買ったもので、
全ての花が咲き終わった後もスタッフが大きな鉢に植え替え、
お水を上げ続けているお陰です。

日本にいるときは、いい状態のみを楽しんで、
枯れた鉢は捨てていました。

「私は、花が好きなだけで、愛してはなかったんだわ」と
いうことに気付かされます。

植物をまめに手入れすることは、主婦のような特定層に限らず、
こちらでは一般的な感覚なんですね。

《動物好きな人》というのは聞きますが、イタリア人の植物を生き物として扱う基本姿勢を感じる今日この頃です。

 

ワインの造り手の葡萄への拘わりようが記載された記事を見かけますが、とりわけ取り上げられるほどのことでもなく、ごく自然のことなのかもしれません。

愛情で葡萄を育て、育つ葡萄に愛しみを感じて・・・・

製造されたものと育てられたものの違いがそこにはあります。

育てられた葡萄がワインに変わっていく。    

トスカーナワインの美味しさの秘密は、植物を愛する、そんなトスカーナの人々の気質が根底にあることかもしれません。

皆さんも是非、この秋はトスカーナで育てられたワインを味わってみてくださいね。

                

 

SALUTE!

 

 

 

 

●トスカーナより、ワインをお届けいたします。

 

シエナで生まれ育った当店のオーナー「パトリッツィオ」は、イタリア国家の認定するソムリエAIS認定資格を持ち、イタリアで唯一の国立のエノテカで22年ソムリエを務めました。

そんな彼のバラエティあるワイン歴から、ワインをセレクションいたします。

 

・トスカーナの美味しいワインを飲みたいけど、どれを選べばいいのかわからない?

・まだ日本に入ってないような、マイナーだけど美味しいワインを試したい!

・こってり系のボディがしっかりしたワインを揃えたい!

・お世話になっている人へ、ワインをプレゼントしたい!

 

などなど、ワインご購入に関するお問い合わせは、

enoteca@palp.com 宛に日本語でメールをください。

 

また、購入ワインが予め決まっている方は、以下エノテカトスカーナのサイトより商品のご注文ができますので、こちらのアドレスにアクセスをお願いします。http://www.palp.com/italy-wine/

 


SALUTE!