シエナ通信 Vol.3 (2001年9月)

Copyright(C) 2001 Kiyomi Otawa

今日は! みなさん、お元気ですか?
早くも9月ですね。気を引き締めなければならないような響きを含む月、9月。
でも、まだ太陽を肌で感じるうちは、寝起きの布団で過ごす‘あと5分〜’のように、
もう少し、このまどろみの夏に身を放っておきたい・・・
そんな余韻に浸りながらも、秋モードスタートです!

秋は、アンテナを張れば張るほど面白い情報が見つかりますからね!
自分に嬉しい情報を見つけたら、早速、行動に移しましょう。
人との出会いやひょんな発見・感動から、新しい何かがスタートするような、
そんなチャンスのレールを敷きましょう。
では、今月も葡萄畑の活気付くトスカーナより、
私のアンテナがキャッチした美味しい情報をお伝えします。

葡萄畑

 日本人オーナー宮川秀之さんのカンティーナ「Bulichella」 

今回はシエナより140キロ離れたリボルノの地スヴェレートで
ワイン造りにいそしむ日本人がいるとの情報を元に、
宮川秀之さんのカンティーナ『ブリケッラ』を訪れました。
ボルゲリの南に位置するこの地はスーパートスカンのヒットを生む
注目地帯です。
最寄り駅‘Campiglia Marittima’で下車したらタクシーで約10分。
ブリケッラへ到着です。

「ブリケッラだね?」
 「あれっ、分かります?」
「わかるよ〜。だってあんた、日本人だもの」
当然のごとく、
タクシーの運転手は私の行き先をお見通しです。

「宮川さん・・・どんな人なのかしら?腕が太くて、
真っ黒に日焼けしたごっつい山男タイプかな?
それとも以外とホッソリして、
いつも近所を散歩しているような
素朴なタイプの人かしら・・・?」
葡萄畑にロマンを注ぐ宮川さんのイメージを
少し興奮気味に描いているうちに、
タクシーはブリケッラに到着。

「いやぁ、来たね。時間通りじゃない!」。
洒落た普段着にサングラスの宮川さん。
 「あっ、この方?」
畑の薫りを漂わせた深い皺の大きな笑顔路線とは、
見事に大外れ。
佇まいがエレガントなおじさまです。

 「あっ、朝食中なんですね、すみません、お邪魔しちゃって。」
「いいの、いいの。ほら、そこに座って!紅茶飲むでしょ、紅茶!・・・」
「これね、自家製のマルメラータ」・・・「お砂糖、いくつ?」
そんな優しいお父さんの雰囲気を漂わせる宮川さんに、
「お砂糖、3つです!」と、遠慮なく咄嗟に答えてしまいます。

「じゃ、行きましょっか?」
宮川さんの号令に、早速カンティーナへ。
この日はイタリア中がヴァカンス真っ最中の8月14日。
しかし、ここブリケッラではカンティーナにオフィスワークに
イタリア人スタッフは働いています。
「チャオ!」「チャオ!」・・・友達のように暖かな笑顔で迎えてくれるスタッフたち。
常時8人体制ですが、8月下旬からのベンデンミヤではその倍の15人体制です。

まず始めに案内されたのは、5,000cc用と2,500cc用、計15のステンレスタンクが並ぶ部屋。
コンピュータでの管理が行き届いてます。
「昔はね、葡萄の発酵ガスで人が作業中に倒れてたの。
発酵時は、浮かび上がる葡萄の皮をかき混ぜてあげなくちゃいけないわけよ。
でも、今はこのシステムで自動にその作業をやってくれるようになったの。
技術の力で、日に日に理想的な処理の方向へ向かっているから、
だんだん美味しいものができてくるわけよ。」
「ほら、この機械見て。
これはね、アメリカ式医学の原理を利用したワイン搬送システム。
ここにあるステンレスタンクからあっちの樽へワインを移すとき、
‘ドゥンッ ’‘ドゥンッ ’というプレッシャーがかかると駄目なのよ
。葡萄が傷んじゃうから。

このシステムだと、スムースに振動なくワインを送れるんだよね。
医学の血液を送る原理を利用してるからさ・・・」
なるほど。葡萄は、丁寧に、デリケートに扱われていて、
その陰の工夫には他業界の原理にまで視点は及んでいるのですね。

 「宮川さんは、昔からワイン造りに夢を抱いていたんですか?
  それとも、この世界に入ってみて、葡萄と関わっているうちに、
  気づくと、とことんはまってしまっている・・・という感じですか?」
「後者だね」

車に乗り、宮川さんと、とことん付き合いのある畑へ向かいます。

「ここの土地はね、
まず、シーズンの4月〜10月は雨が降らない。
冬はたっぷり降るんだよ」
 「雨は、駄目なんですか?」
「ダメ。葡萄は、たまり水を嫌うの。
それに、雨降ると、トラクターが畑に入れないしね」
「土はね、石が多くて、粘土質の赤い土壌」
 「どうして、石が多いと良いんですか?」
「石はね、ミネラルをたっぷり含んでるから」
なるほど。栄養価の高い葡萄になるんですね。

「ワインはね、土作りから始めるの。
ほら、この畑、今寝かしてあるでしょ。
これから数十年もたせる畑だからね、
苗を植える前に、土を掘り起こして、
太陽の下で風通しをよくさせた状態で1年置くんだよ」
「でね、10月にはたい肥を入れるんだよ。
うちは、有機ワインだから、勿論たい肥も有機。
牛の糞を使うの。それも特約してるんだよ。
ホルモンや狂牛なんて、駄目だからね。」

葡萄畑やオリーブ畑の土は、1メートル掘り起こすことが条件のようです。
「このオリーブの木は今一なんだよ。10年目なんだけどね。
どうしてだろう、どうしてだろう・・・?って考えたあげく、
当初、60センチしか掘り起こさなかったのが原因じゃないか?ってことになってるの。
根がしっかり伸び広がってないかもしれない。10年後に結果が見えるんだもんな〜」

長期戦故に、忍耐と情熱の真剣勝負です。
でも、きちんと取り組んだ結果、きちんとしと応えてくれる葡萄故に、
宮川さんとワインの世界との絆は相当に深いようです。

 「イノシシとか、来ます?」
「来るよ!ほら、これイノシシ避けの電線。触れるとピリッとするの。
イノシシはね、も〜凄いんだから。食べるときは食べあさってくんだよ。
味覚えられて、食べに通われたら困るからね・・・」

また、別の畑には大型ストローのような筒で囲まれた苗がありました。
「葡萄の木の苗は‘バルバテッラ’っていうの。
バルバテッラの新芽は、うさちゃんの大好物。
こうやっておくと食べられない」
宮川のお父さんの口から、〈うさちゃん〉と聞いた瞬間に、ホワッとした親近感を感じます。

「このバルバテッラは可哀想なの」と宮川さん。
 「どうしてですか?」
「本来11月に植えるのがいいんだけど、去年は雨だったから今年の初夏から植えたのね。
太陽にいきなりさらされてるでしょ」

説明の最中も、目に留まる雑草をむしる宮川さん。雑草むしりも毎日の日課だそうです。

畑仕事が、業務ではなく、思いやりから来る行為のように思えます。
思いやりを持って仕事している人には、葡萄達も応えますよね!

「このカベルネ見て!今年の4月15日の霜でやられちゃったんだよね。
房が出てこない。焦げちゃって縮んじゃったんだ」

そんな葡萄を見た後で向かったのが、
少し高台にあるサンジョベーゼの畑。
「昨日ね、マリーザ(奥さん)は忙しそうだったけど、
ここにわざわざ連れてきたの。
これ、今までの集大成だもの、
一緒に喜びを分かち合いたいじゃない・・・!」
この畑に育つ葡萄達は、
重量感あふれる粒のぎっしり詰まった房ばかり!
 「わ〜っ、凄っいですね!見事な房!」
これだったんだわ。
さっきから何度も宮川さんの口から出る
‘後で見せたいものがある’ていうの!

数メートル違いの畑ごとの葡萄の出来も、いろいろとあるんですね。
同じ年や同じ地方の畑ということで、
葡萄の状態をひとまとめに語れないんだな、
ということを身をもって味わいました。

 「宮川さん、毎日ワイン飲むんですか?」
「僕ね、ワイン飲むと寝ちゃうの。だから、食事時は美味しい水」
「仕事ではね、さっき説明したカベルネのように、味に集中するけど・・・」

"さっき説明したカベルネ" そうなんです。
先ほど発酵、熟成の説明を聞いている最中に
宮川さんの指示なく、スタッフのステファノがグラス一杯のカベルネを
私に誇らしげに差し出しました。

実は、来春あたりに実に見事なカベルネのスーパートスカンが
ここブリケッラよりデビューすることを、みなさんに早耳速報しますね。

イタリアワインの評価本〈ガンベロ・ロッソ〉のポイントを決めるキーマンで有名な
ジェンティーレ氏も、このカベルネには、「Bello!」と感嘆したほどの出来なんです。

〈ガンベロ・ロッソ〉では12の興味あるカンティーナに選ばれるブリケッラ。
今回の〔Vinitaly〕では、トスカーナ有機栽培部門白ワイン200銘柄のうち
10に選ばれる評価を得ています。

ブリケッラのワインは全て有機栽培です。
しかし、〈有機栽培〉ということを表だってアピールしていません。
有機栽培ワインのカテゴリーとして有機の視点での評価を受けるのではなく、
あくまでも一般市場のワインの中で‘味’と’品質‘の評価を求めます。
「美味しいねぇ、このワイン・・・。あれっ、有機なんだ」と感じてもらえる、
そんな美味しくてきれいなワインを目指します。

今のエノロゴ‘ルチアーノ・ヴァンディーニ氏’とはとても気が合うそうで、
先日もフランス・スペインへバリックの視察旅行へ一緒に行って来たそうです。
「バリックはね、あれ、トーストされてんだよ。香ばしさを出すようにね。
そのトーストの仕方にもウェルダンとかミディアムとかあるんだよネ〜」
「バリック一つとっても、奥が深いんですね」
「そう。また、アメリカオークは6年持つけど、フレンチオークは5年持つの。
それぞれカッティングスタイルも違ってて、コストにも反映されるんだよ」
ちなみに、ブリケッラではウェルダンタイプとミディアムタイプを同等の比率で使ってます。

‘僕の代では12ヘクタールを立派に育てたい’という宮川さん。
拡大よりも、質の向上にエネルギーを注ぎたいとのこと。
36ヘクタールの三分の一は葡萄畑にする予定で10ヘクタールは既に完成しています。
そのほか、1700本のオリーブの木、野菜畑、干害用の池などで土地は占められます。

宮川さんには‘目には見えないワインの姿’に気付かせて下さったこと、感謝します。
ワインは、まさしく自然界の掟に基づいた、
葡萄と人間との共同作業による、味覚の作品なんですね。

葡萄作りのスタート時期をじっと待つ土の様子、大事に守られるバルバテッラ、
葡萄の見事な房に大喜びのスタッフ・・・・
ルビー色をした一杯のグラスワインの向こうには、葡萄作りのストーリーが
まだまだ隠されているようです。

★日本のこのお店でブリケッラのワインを購入できます
東京の東急東横線‘学芸大学前’にあるイタリアンレストラン「アミーチ」で、
ブリケッラのワインをお買い求めになれます。
  イタリアンレストラン アミーチ  (オーナー:堀田さん)
  住所:東京都目黒区五本木2−54−14 
  TEL:03−5721−0332 

・TUSCANIO ROSSO  Sangiovese 80%, Cabernet Sauvignon 10%, Merlot 10%
・RUBINO  Sangiovese 90%, Canaiolo 10%
・TUSCANIO BIANCO  Trebbiano 50%, Vermentino 25%, Pinot Bianco 25%
・BULI’BIANCO  Trebbiano 80%, Vermentino 20%

 〔セリエA 中田記念ワイン〕
  宮川さんのいたずら心から、こんなワインも登場です!
  中田ファンの方、コレクションにこのワイン見逃せませんね?
  ・Lupo ローマ時代の中田を記念したエンジのラベルに
  ローマのマークがあるワイン
  ・Rubino パルマデビューを記念した
  ブルーと白のコントラストのラベルに
  パルマのマークがあるワイン

★1983年、ブリケッラは都市離れをしたいという4家族と共に、
  以下共通の目標を掲げ共同農園としてスタート。
 
  ・有機栽培できれいで美味しいものを作り、
   それを自分達で食するだけでなく、外部にも提供する
  ・田舎生活においても都市とのコミュニケーションを図る
  ・恵まれない子供や貧しい国の人達のために働きかける
 
 1998年目的達成後、1999年からは宮川ファミリー単独による
 ブリケッラ再スタート。
 高品質で純粋なワイン造りの他に、
 日本の教育制度や家族の歪みが生み出した不登校、引きこもり、
 中途退学の青少年をイタリアで引き受け、社会復帰に向けたプロジェクトを実施。 

・宮川さんの自伝書
   『われら愛の地球家族』 著/平澤一郎 海竜社

★ブリケッラはアグリトゥリズモもやってます。イタリアにお越しの際の宿泊にいかがですか?
  Azienda Agricola Bulichella loc.Bulichella,131 57028 Suvereto(LI)-Italia
  TEL:+39-0565-829892 FAX:+39-0565-829553
  e-mail:bulichella@etruscan.li.it

シエナよりワインの旅をするために

バスの時刻表・シエナのバス事情はこちらをクリックしてください

Greve in Chianti 、 Gaiole in Chianti 、
Radda in Chianti・・・
いくつものゾーンに分かれるキャンティですが、
その中で今回は〔カステリナー・イン・キャンティ〕
〔ラーダ・イン・キャンティ〕を訪れてみましょう。
シエナより22キロに位置する
カステリーナ・イン・キャンティへは、バスで35分。

短い道のりですが、まるで葡萄達が
‘葡萄交響曲’でも
奏でて迎えてくれているような、
葡萄畑が差し迫る街道を
バスはのんびり走っていきます。

そして、カステリナーよりラーダへは
更にバスで20分。
上り坂をカーブするごとに登場する
キャンティ一面のパノラマに
息をのむことでしょう。

どちらも本当に小さな町です。何軒かのエノテカと数軒のレストラン。
そして、旅行者を意識することなく、そこに生活する人が通う肉屋、
八百屋、金物屋などがメインの小さな露地脇に並びます。

この日、シエナへの最終バスはラーダ発18:40。
ほぼ貸し切り状態のリムジン化したバスの窓から
日没前のオレンジがかった琥珀色の空気に包まれ、柔らかく輝く葡萄畑を眺め、
「ここの葡萄飲んでるんだ〜・・・」とキャンティへの愛着にうっすら色付いた、
シエナへの帰り道でした。

 カンティーナへの訪問、
 短期のレストラン厨房研修はいかがですか?

ワインの仕事に携わるマルコ・ムッチャレッリは、
カンティーナ訪問や
有名レストランの3日間厨房研修などの
申し込みを受け付けてます。



  ●カンティーナ訪問  
     ツアー実地日  4月〜11月下旬の火曜・金曜 
     所用時間     10:00〜15:00 約4時間
     ツアー内容    訪問カンティーナは1件
                ワイン・オリーブオイルの生産ディテール、
                歴史等の説明とカンティーナ・畑訪問。
                キャンティのレストランシェフによる
                ランチとワイン(3種)
                カステリナー・イン・キャンティ(町中)からカンティーナへの移動
    
  ●レストランの3日間厨房研修
     ハイシーズンの期間を除き、キャンティにあるレストランで 短期厨房研修ができます。   
         
参加費用、祝日・特別期間(クリスマス・パスクア・ヴァケーション)の実地予定確認、
対象カンティーナ・レストラン等の詳細情報は、以下へお問い合わせください。英語でOKです。
お問い合わせ:+39−0577−740620  月曜〜金曜(10:00〜13:00,16:00〜18:00)
  www.chiantiwinetours.com fuflus@yahoo.com


●キャンティで宿泊

・Palazzo Squarcialupi tel/0577-741186 fax/0577-740386 via
 Ferruccio,26(町中)e-mail:squarcialupi@italyexpo.com
     ★★★ホテル。
     庭・駐車場あり。テレビ、エアコン、電話、室内冷蔵庫、トイレ付き。
     スタンダード 190.000リラ/ ジュニアスゥート 240.000リラ/ スーペリオーレ 290.000リラ

 ・Girasoole tel/0577-741327 fax/0577-741347 via Trento e Triste,45(町中)
     ★★★ホテル。
     テレビ、電話、トイレ付き。
     スタンダード/ハイシーズン 190.000リラ、オフシーズン 170.000リラ
 
私の場合、ホテルの予約はまず先方に電話を入れ、希望日の空室状況、
金額、支払い方法等の確認をします。
そして、予約確定のために、自分の名前、連絡先、宿泊日、
電話で話した条件(金額や朝食付き、トイレ付き等)を
記載したFAXを先方へ送ります。
念のため、先方からも予約確定の返事がFAXでもらえるとよいのですが、、、。
もし、大変そうでしたら、航空チケットを買った旅行代理店や
海外で使えるキャッシングカードのサービスに〔ホテル予約手配〕のあるところも
ありますので、そこにお願いしてしまうのも手ですね。


●そして、美味しい物、食べましょ!

ここカステリナー・イン・キャンティの町中に地元の人から
かなりの熱い支持を受けているレストランがあります。
約120前のオープンから3代続くStiaccini家の家族経営レストラン『La Torre』です。

実際、この値段でこの質のものが食べられるのでしたら、地元のリピーターも多いはず
この店の売りは、何といっても肉・野菜の鮮度。
肉は、飼養者から直接仕入れる地元産のみを使用。
〈Gira arrosto・炭焼き風〉〈Umido・煮込み風〉やパスタのソースとして
素材の持ち味を十分に堪能するメニューばかりが勢揃い。

季節によって異なりますが、野生のイノシシ・野ウサギ・キジ・仔牛などが揃います。
野菜は農園から直接買いをしています。
そして、数ページに渡るワインリストは、ブルネロの一列を除き、全てがキャンティ・クラシコ。
あくまでも地元産。ここまでポリシーの徹底された店に巡り会うと、深〜く得した気分になります。
鮮度にこだわるこの店の厨房には、電子レンジなどありません。

「日本のみなさんが作れるレシピを紹介していただけますか?」
という質問に対して、
「レシピはお教えできても、料理の内容は全く別物になってしまうわね。素材が違い過ぎるから。
だから、日本のみなさん、‘La Torre’に食べに来てください!」というお答えを戴きました。

La Torre
Piazza del Comune Castellina in Chianti  
0577-740236 
(金曜定休・9/1〜10休業)
・営業時間 :12:00〜14:30、
        19:30〜21:30
・平均客単価:ITL 50.000 (ワイン除く)
  クレジット可 


数あるメニューからのお勧め
 ・第一の皿(プリーモ) 
    「Pappardelle con il sugo di cacciagione・
     野生肉を使ったソースの幅広いきしめん状パスタ」
    「 Risotto ai fungihi ・ポルチーニ茸のリゾット」。
    メニューに載ってませんが、オーダーすれば作ってくれます。
 ・第二の皿(セコンド)
    「 Bistecca alla fiorentina ・フィレンツェ風ステーキ」
    「 Arrosto misto ・旬の肉ローストの盛り合わせ」

店のスタッフに個人的な好みを聞いてみたところ、
「Tagliatelle ai fungihi con rucora・ポルチーニ茸とルッコラのタリアテッレ」
「Risotto ai fungihi ・ポルチーニ茸のリゾット」
がお気に入りだそうです。

帰りがけに、別の落ち着いた感じのスタッフに「好きなワインは何ですか?」と
聞いてみたところ、手にしたボトルは
「Rocca delle Macie/ROCCATA `97」、
「Castellareより I SODI DI S. NICCOLO`と
Chianti Classico Riserva Vigna Poggiale」。
このストレートな返事に、思わず側の八百屋でROCCATA `97を買ってしまいました。
ン〜 BUO〜NO !



エノテカショップ動向

ガンベロ・ロッソや雑誌の切り取りページを見ながら
「Tignanello」ある?「Gaja」は?とトスカーナ以外のワインまで
聞いてくる外国のお客様に比べ、
ここイタリアの地元の人は、招待された友達の家への訪問に、
そして誕生日のプレゼントに「リナッシメントある?そしたら、3本!」とか、
「キャンティは、どれにするかな・・・?」というように、
自分の中にある情報を頼りにワインを選ばれる方も多いです。

そして、そんなワインは決まってお手頃価格。
そこで今回は、トスカーナの地元の人に買われる傾向のワインをいくつか紹介します。

    ・Fattoria di Felsina 「Chianti Classico Berardenga」
    ・ AZIENDA AGRICOLA LANCIOLA 「Chianti Classico LE MASSE DI GREVE」
    ・Bsdia Coltibuono  「Chianti Classico 」
    ・LE FILIGARE 「Chianti Classico Riserva」
    ・DIEVOLE 「Novecento」「Rinascimento 」「Maestro」
    ・Castello di Fonterutoli 「 Chianti Classico Fonterutoli」

質問っ!

「アメリカの根っこは強いからね〜。カットしたってニョキニョキ出て来るんだから・・・・」
キャンティで働く友達から招かれた夕食の席で、いつものようにワイン中心の話題が進む中、
このフレーズに軽いブレーキがかかります。

「ちょっと待って!なんでアメリカが出てくるの?どして・・・?」
「僕たちが手がけている葡萄の木は、根っこはアメリカ産のものを使ってるんだ。
生命力がめちゃくちゃ強くてね。で、そこに挿し木をしてるんだ。

でも、アメリカ根からの枝がビュンビュン出しゃばって出てくるもんだから、
それを切り取らなくちゃならないんだ」

知りませんでした!根っこはアメリカ産で木はイタリア産だなんで。
ということで、今月はこの件についてパトリッツィオに質問です。

「パトリッツィオ、本当なの?イタリアの葡萄の根はアメリカから来てるの?」
「そう。イタリアだけじゃないよ。フランスだって同じ事がいえるんだ。
今もアメリカから根を買い続けているかどうかは分からないけどね、
今あるヨーロッパの葡萄はアメリカ産のクローンなんだよ。
今から約100年前に、ヨーロッパ中に葡萄の根の病気がはびこってね、
当時はアメリカからの根に頼るしかなかったんだ。
だから、葡萄の木の祖先はアメリカって言えるんじゃないかな?
植物の生命は繰り返すからね」

「イタロアメリカーノ」とは、祖先がイタリアからの移民であり、
本人にイタリアの血が混ざっている、そんなタイプのアメリカ人を指します。

そんなイタリアからアメリカへ渡った人間に対して、
アメリカからイタリアヘ渡ってきた葡萄の根。
「アメリカーノイタロ」とでも言えばいいのでしょうか?
ちょっと意外な発見でした。


おまけのイタリア語コーナー!

おしゃべり好きで茶目っ気のあるイタリア人。
レストランやバールで、店のスタッフと目があって、
ニコッと微笑みを交わした瞬間に、一言が続くと嬉しいですね。
そこで今回は、挨拶のフレーズをいくつかご紹介しましょう。

   ・今日は。 
      チャオ!
      Ciao!

   ・私の名前は○○○です。 
      ミ キアーモ ○○○
      Mi chiamo ○○○
  
   ・私は、日本から来ました。 
      ソーノ ベヌート(ベヌータ) ダル ジャポーネ  *(  )=女性の表現
      Sono venuto(venuta) dal Giappone

   ・初めまして!
       ピアチェーレ!    
       Piacere

   ・イタリアが好きです!
       ミ ピアーチェ リタ〜リア!    
       Mi piace l’Italia



ある日、サンガルガーノでのコンサートに向かう車中の中で、
友達の娘サラちゃんからこんな質問を連続的に受けました。
 
 「ねぇ、本当?日本ではみんな教室でちっちゃな容器に入ったランチを食べるの?」
    「そうよ!お弁当」
  「ねぇ、みんな学校へは制服で行くの?」
    「そう。全部の学校じゃないけど、ほとんど制服あるのよ!」
  「ねぇ、授業の後、クラブ活動があるって本当?」
    「あるある!バスケットとか、吹奏楽とか・・・」

一つ質問に答える度に、「ワァ〜!」っと、
まるでギフトボックスを開けた瞬間のような歓声と共に感動してくれるサラちゃん。
中学へ通う14歳の彼女は大の日本好きで、
ある日、朝起きた時から寝るまで日本の景色のビデオを観続けたあげく、
その晩は夢の中で日本へ訪れたそうです。

サラちゃんはこちらでTV放映される日本アニメの大ファンで、
ストーリー以外にも、その中に登場するさり気ない日常生活シーンに惹かれているます。

サラちゃんの他にも、‘うる星やつら’のラムちゃんに夢中のマルコや、
ハイジの歌をいつも口ずさむジュリア、
そして吉本ばななさんの小説の大ファンという人も結構多いんです。

そんな友達から、
  「ねえ、おにぎりって何?」「うめぼしって、どんなの?」・・・?という質問に加えて、
  「結局、日本人も私たちも、似たような感性を持ってるんだね」との感想もよく聞きます。

レストランやワイン、ファッション、サッカー・・・など、
日本ではイタリアンテイストのものは馴染みのモノとして定着し、
既に日常化された存在感です。
しかし、日本からイタリアへ入ってくる‘お手頃・お馴染み感覚のもの’
といったら、どんなものがあるのでしょう?

未だに日本料理店はイタリアでは高級店扱い。
‘すし’‘天ぷら’‘刺身’のメニューを
日本文化の演出の効いた異空間で味わうといった、
一般学生などには手の届かない世界です。

しかし、‘たこ焼き’‘おにぎり’‘丼モノ’のといった
私達の〈普段〉を紹介する場はないのでしょうか?
日本人に対する認識から出る大人達の‘すし’‘着物’‘仏教’といった
ニュアンスの単語に比べ、サラちゃんの‘お弁当’‘放課後の部活動’という
日本感の言葉に、「もっと素の私たちの生活アイテムから日本を感じてもらってもいいよね」と、
ふと感じさせられました。

みなさん、もし、身近に外国の友達がいるようでしたら、
彼らを日本の代表食選手を狙った、すし・天ぷらとは別に、
居酒屋や一般食堂、ラーメン屋などに誘ってみてはいかがでしょうか?
意外に喜ばれそうですよ!

おっと!話題が自然に食に運ばれて、まさしく、秋到来なのでしょうか?
飲んでは食べて、食べては呑んで・・・食の贅沢大賛成!
近所の八百屋や魚屋に出向き、旬のお勧めものを堪能しましょう!
料理に合うワインの用意もお忘れなく!
では、大いに食べ過ぎてください!  
Buon appetito!