シエナ通信 (20029月)

「日本は猛暑が続きます。さぞかしイタリアも暑いことと思いますが・・・・」

というメールをいただいた8月でしたが、実際のところ涼しい日が続いた夏で、ラテンエネルギーを消化しきれてないまま後ろ髪を引かれながらも秋に入りつつあるシエナです。

この夏はお客さまと食事する機会が多く、美味しいワインとトスカーナの郷土料理で過保護に育った贅肉がお腹の上に住み着き、贅沢を覚えた胃は秋の食材を待ち構えています。

「運動でも始めようかな・・・?」と思ったりもしますが、《Non mettere carne troppa al fuoco ! 》。

(たくさんの肉を火にかけない!さもないと、焦げちゃうよ=一度に多くのことをしすぎないように)大げさなことを始めて3日坊主になるよりも、まずは小さな習慣改革!
自宅からエノテカまで、通常コースで302キロの道のりを少し伸ばして、の〜んびり遠回りの出勤をすることとします!

イタリアに来てからよく口にするようになったこの『の〜んびり』という言葉。

『テキパキ』という言葉に対して、『の〜んびり』という響きからは今一緊張感に欠けた怠惰なイメージを感じたりもしますが、『の〜んびり』と共存するリラックスの中に、フレキシブルな感覚が生まれたりもしますよね。

ということで、今回もそんなシエナののんびりした生活リズムから感じたことを日本の皆様に発信します。


Chiacchiere 〜おしゃべり〜


店内には絶えず会話があります。

スタッフとお客様、スタッフ同士、またはお店に出入りする業者の方と・・・

そんなおしゃべりの‘ほ〜んの一部’をここにご紹介しましょう。

「さよなら、懐かしの味キャンティクラッシコ!」

トスカーナワインとしてまず思い浮かぶのが黒い鶏マークで有名な《キャンティクラッシコ》ではないでしょうか。

その昔、2度首相を務めたことでも有名なバローネ・ベッティーナ・リカーソリが1847年、キャンティのルールを設定しました。

サンジョヴェーゼ70%、カナイオーロ15%、白葡萄のマルヴァジア15%という混醸比率です。

白葡萄を使うことが義務付けられていたキャンティですが、「赤ワインに白葡萄を混合するなんて・・・」という赤ワインの質の低下を批判する声が高まり、1967年の法改正では白葡萄は10〜30%、その後1984年の改正で2〜5%、そして1996年から現在に至るキャンティクラッシコの規制では、0〜6%までとなっています。

《白葡萄を入れなければならなかったキャンティ》から《白葡萄はいれなくてもいいキャンティ》へ。

そして、とうとう2004年より、《白葡萄は入れてはならないキャンティ》へと変わります。

キャンティクラッシコ協会は白葡萄の混醸を正式に禁止します。

ほとんどのキャンティクラッシコが白葡萄を使用しない流れになって久しいですが、エノテカトスカーナの数あるキャンティ商品の中に、今だ、白葡萄を使用しているキャンティクラッシコがあります。

サンドナティーノの『POGGIO AI MORI』というキャンティクラッシコです。

店頭でこのクラシックな味わいのキャンティを試飲セレクションの一つに選び、お客さまに紹介しました。

「ん〜ン!」

ワインの香りに漂うお客様の感想は全国共通ですね。軽くまぶたを閉じ、言葉より先に鼻から感想が漏れます。

「このキャンティ、飲みやすい。10本もらおうかな。」

パトリッツィオが奥からダンボールを抱えて戻ります。

「これ1箱に12本入ってますよ」

「じゃ、1箱!」

ドイツやスイスから車で訪れるお客様は、デイリーワイン用としてこのキャンティをケース買いしていきます。

トスカーナの生活スタイルは、新しいものを積極的に取り入れることよりも、変わらぬ風景、昔ながらの味覚など受け継がれる伝統の上にゆっくりと変化を受け入れます。

白葡萄入りのキャンティの味も、そんな保守的なトスカーナの人々に支えられているものと思っててましたが、この味に好感を示す外国人のお客様が多いことを実感しました。

「このタイプのキャンティがなくなるなんて、納得いかないよな」とステファノ

「同感!」弟分のルカがいつもの癖で何度も首を縦に振ります。

「そう言えばね、この2000年のヴィンテージ版では、白葡萄を使う替わりにカベルネ・ソーヴィニョンを使ってるんだって」

「あ〜ア、がっくり」

Stupida!(愚か者〜!) 」

厳しい批評が書かれる白葡萄入りのキャンティワイン。

機会がありましたら、一度、ご自身の舌で確認されてみてください。

私達エノテカトスカーナのスタッフは、白葡萄が混合されていても、しっかりとした造り手のものであれば、十分おいしいという意見を持ってます。

このワインは、トスカーナ地方のレストラン、エノテカをメインに流通してますが、このワイナリーのオーナーが、今は亡きフランスの有名歌手レオ・フェレだったこともあり、海外での取引先はフランス、そしてベルギー、ドイツ、オランダ、イギリス、デンマークと続きます。

今は奥様のマリアクリスティーナさんがカンティーナを守ります。

そして、レオ・フェレの作品タイトルにふくろうが使われていること、このファミリーがふくろうの愛好家であることから、ワインのラベルにはピカソのふくろうの絵が使われています。

お会計を済ませたフランス人のお客さまが、手招きで私を呼び寄せます。

「どこから取り出したんだっけ、このキャンティ」

 「これですね」

「そう、これ。もう1本、頂戴!」

 「メルシー!」

Poere San Donatino  『 Poggio AI MORI ’99 』

キャンティ地方で有名なエノロゴ「ジュリオ・ガンベッリ」の支持の元、カステッリーナ イン キャンティにある70ヘクタールの所有地のうち、13ヘクタールが葡萄畑に充てられワイン造りが行われてます。

●使用葡萄

・サンジョヴェーゼ 

・カナイオーロ・ネロ 

・マルヴァジア(白葡萄) 

・トレッビアーノ(白葡萄) 







葡萄畑

モンテプルチャーノのワイナリー『VAL DI PIATTA 』を再レポート

このカンティーナを訪れたのは812日。ヴァカンスシーズンとあって、この時期、来客の対応をするカンティーナが少ない中、ここはいつもワイナリーを訪れる観光客を迎え、カンティーナの見学とワインの試飲を提供してくれます。

畑では、葡萄の木の伸びた先端を切り取るチマトゥーラ、房の選果、雑草を抜き取る手作業が行われていました。

今回、「ヴァルディピアッタ」のオーナーの娘さん、ミーリアンさんにお話を伺います。

99年と2000年の天候は、雨と太陽が理想的なすっごく恵まれた年だったの。

ワイン造りが容易だった年ともいえるわ。

それに比べて98年は難かしい年だったわね。決していい年とは言えないこの年のワイン造りには、同じ質を保つためのワイナリーのポテンシャルの高さが問われた年だったわ。

実際、私達の98年モノのワインは実に見事な出来になってる。

ボルドーに協力チームがあって彼らと意見を交わしながらワイン造りをしているんだけど、私達が重視してるのは、丸みのあるサンジョヴェーゼのタンニン。

サンジョヴェーゼのワインは本来、リボリータ(野菜を煮込んだトスカーナ伝統スープ)、キアニーナ(モンテプルチャーノを中心に数少なく棲息する白い牛)、ペコリーノ(ピエンツァ地方で生産される羊のチーズ)などといった伝統的なトスカーナ料理と一緒に飲まれ、サンジョヴェーゼの持つタンニンはこれらの味とマッチしていたわね。

でも、ワインが世界に流通されるようになった今、必ずしもトスカーナ料理のある席でこのワインが飲まれるとは限らなくなってきた。そこで、他の料理のことを考え、角のとれた、よりまろやかなタンニンへとワイン全体の構造バランスを保つことに重点を置くようになったの。

「丸みにこだわるということで、フィルターに何度も通してるのかしら?」

いいえ。フィルターに頼る方法ではないわ。

フィルターを通すことで悪いものも取り除けるけど、美味しさまでも取りさってしまう。

丸みあるタンニンに必要なのは、葡萄の木への働きかけ。

ポイントは濃度の高さを保つため収穫時期は決して早めではないこと。収穫時期を後半に持ってくることで、糖分が豊かな葡萄が採れるから、9月に入ってすぐ始めるのではなく、今年は928の土曜日からスタートするの。10月の半ばまでね。

カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、そしてサンジョヴェーゼと収穫に入っていくの。

葡萄一粒のうち、85%〜88%は水分、12%〜13%のアルコール、そして1〜2%のポリフェノーリ。

このポリフェノーリがワインの色、香り、構造、アロマ・・の質を左右するのよ。

始めは葡萄の実の糖分を計って熟れ具合を観測していたけれども、今はこのポリフェノーリの熟れ具合を見るの。

収穫の前に畑ごとにいくつかのサンプルの葡萄の粒をとって、特別な分析をするのよ。

この分析でポリフェノーリの成熟具合が分かるのよ。

ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノの協会も畑を回り、葡萄を味見して、種の成長具合も検査するの。

種の成熟具合って、タンニンにとってとても大切なのよ。葡萄の糖分が高くても、種の成長がまだだとタンニンは角があってとっても強い。まろやかなタンニンにはならないの。

果実、種ともに熟れている状態が、理想のコンディションね。

ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノのワインは最低、80%以上のプルニューロ・ジェンティーレ(サンジョヴェーゼ)使用が義務付けられていて、99年からは100%の使用が認可されたのよ。

VAL DI PIATTA/ヴァルディピアッタ」のワインは40%がイタリア国内に流通され、残りの60%はスイス、ドイツ、ベルギーを中心に輸出されています。

ここのヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノは、85%がプルニューロ・ジェンティーレ、15%のカナイオーロ・ネロのブレンド。始めの6ヶ月はバリックを使って熟成されます。

桑の実(クロイチゴの実)、キイチゴなどといった、森の果実を連想させる果実味が鮮明に香る中、まろやかなタンニンが暖かく口の中に広がり、長い余韻と共に、心地よさに浸れます。

この健康的に洗練されたキャラクターのワイン、是非、お試しください。



★ シエナレポート  〜メルカート(生活市場)〜

シエナ市民セネーゼに欠かせないのが、毎週水曜日に開かれるメルカート

生活市場です。

シエナの中心フォルテッツァ付近に200以上並ぶ露天商では、シーズンモノの衣料、靴、鞄、生花、食料品などなど、シエナ庶民の生活臭が漂う品々が所狭しと並び、あちらこちらのブースから道行く人の関心を誘います。

ファッションでも有名なイタリアですが、日本に紹介されるようなブランドとは違った別のモード、シエナ庶民のありのままのセンスを垣間見れることでしょう。

早朝から賑わうメルカートは、昼過ぎ(1300)には閉まります。

11時頃からピークとなりますので、ゆっくりと商品を選びたい方は早起きが必要ですね。

アンティーク柄のキッチン用品、可憐なレース、エレガントなシルエットのワンピース、重量感みなぎるハムやチーズ、季節の花々・・・

イタリアから一歩踏み込んだ地元の生活がそこに見つかるはずですよ!


★ 最後に一言

「キヨミ、お願い!パトリッツィオリに頼んで、日曜日お休みもらって頂戴!」

 「あ〜ダメダメ。日曜は私と彼の2人体制だから、悪いけど無理だわ」

「今回だけは特別なの。分かるでしょ?だから何とか〜・・・ねっ!?」

1日おきにかかってくる友達からの電話に根負けしてお店のシフトを調整し、日曜日の午後は友達の姪イラーリアちゃんの6歳のバースディパーティに向かうことになりました。

私が知る限りでは、シエナの子供たちの誕生パーティーはとってもBIGです。

近所の子、クラスメートなど20人くらいが集まるため、お誕生日主人公の親は、

会場探し、お料理、遊びのアイデアなど、何日も前から準備に取り掛かります。

という訳で、今回のパーティで私が担当するのは、《子供たちの折り紙コーナー》。

イタリア人にとって折り紙は遥かかなたの異国文化。神秘的な芸術なんですね。

「凄いよ!一枚の紙がこう変わるんだよね!これって、やっぱり日本人だよね!」

好奇心と感動の眼差しを浴びながら折る指先にくすぐったい緊張を感じます。

キリン、ゾウ、小鳥、ブタ、等々・・・レパートリーはつきませんが、‘6歳’を意識して簡単に折れて遊べるもの・・・そうなると、やはり走り回れる飛行機でしょうか?

エノテカの同僚、ステファノは、山本ツネトモ著の「葉隠」というイタリア語訳化された本を読んでいます。

「キヨミ、侍の3つの徳って何か知ってる?《知恵》・《寛容》・《勇気》なんだ」

 「ふ〜ン・・・」

「キヨミ、セップクでも、ハラキリでもなくて、‘ジュンシ’ッて呼ばれてるのがあるんだ。」

 「・・・・・・」

「知らないの?インニョランテ〜(アホだ〜!)」

ということで、私もこの本読んでやろう思い、早速日本から取り寄せました。

イタリアにいながらして、日本文化の意識逆輸入を受けています。

「日本にいた時にもっと勉強しておけば〜・・・」という後悔はありません。

興味が湧いたその時に知らないことを吸収するのって、楽しいですよね。

京都出身の友達との食事の席では、芸者さんと舞妓さんの違い、着物の帯の柄が季節の先取りであること等々の話に興味を惹かれ、早速、翌日エノテカのスタッフにも話しました。

一昨日も、お店に一人で訪れたボストン出身の女性客に誘われ食事をし楽しい一時を過ごしました。

両日とも気付くとワインのボトルが空になっています。

「今度は、誰とワインを空けることになるのかしら?」

次のボトルと共に展開される話題が楽しみです。

ということで、今月も、月の見える屋外のテーブル席でワインと食事、そして会話を味わおうと思います。

皆さんは、どんなきっかけで、どんな方とボトルを空けることになるのでしょうか?

では、また!

Buon Divertimento!

●トスカーナより、ワインをお届けいたします。

・トスカーナの美味しいワインを飲みたいけど、どれを選べばいいのかわからない?

・まだ日本に入ってないような、マイナーだけど美味しいワインを試したい!

・こってり系のボディがしっかりしたワインを揃えたい!

・お世話になっている人へ、ワインをプレゼントしたい!
などなど、ワインご購入に関するお問い合わせは、

enoteca@palp.com 宛にメールをください。

また、購入ワインが予め決まっている方は、以下エノテカトスカーナのサイトより商品のご注文ができますので、こちらのアドレスにアクセスをお願いします。http://www.palp.com/italy-wine/